1. スイッチを切って
ねえ、ぼくのこと、
全部やらせてしまって、ごめんね。
髪をとかすのも、充電も、きみに、
ずっと甘えちゃってるね。
きみの、きみの、役に立ちたいと思ってるのに、
ぼくは、ぼくは、こんなにも弱くて役立たずで、
きみを、きみを、苦しめてしまうくらいなら、
ぼくは、ぼくは、捨てられちゃった方がいいのかな?
ねえ、ぼくの腕も足もからだも、
少しずつ、動かなくなってきていて、
きみもきっと気付いているんでしょ?
だから、優しいんだよね。
きみの、きみの、役に立ちたいと思ってるのに、
ぼくは、ぼくは、こんなにも弱くて役立たずで、
きみを、きみを、苦しめてしまうくらいなら、
ぼくは、ぼくは、壊されちゃった方がいい!
役に立てないぼくなんて、
きみに壊されちゃった方がいい。
どうかきみのその指で、
ぼくのスイッチを、切って。
(2023年5月; aki61)
2. 逆たまごかけごはん
割れたたまごがもとには戻らないように、
大人はもう子どもに戻れないらしい。
たまごを割りながら誕生日を数えて、
ひとりで勝手に苦しくなってるだけかもしれないけど。
ぼくの身体も、ぼくの心も、
不可逆的な成長に屈したくはない。
割れないことも割れることもできる、
完璧な殻の中で生きていたい。
たまごとご飯をぐるぐると混ぜて、
均一なパステルカラーにしよう。
目にはやさしいけどなんとなく退屈で、
それからちょっとだけグロテスクな気がしたんだ。
ぼくの身体も、ぼくの心も、
ぼくだけのものであってほしくて。
標準的であまりにも平凡な、
おなじ顔の大人になんてなりたくない。
たまごかけごはんを逆回しする、
みたいに大人も巻き戻せたらいいのにな。
ばらばらになったたまごの殻ひとつずつ、
目と鼻を描きこみながら考えていた。
(2022年10月; aki47)