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『きみを歌う』歌詞

ジャケット

1. きみを歌う

ひさしぶり、また来てくれたんだ。
さいきん寒いけど、風邪ひいたりしてないかな?
新しい曲が書けたんだ。
またぼくが歌うのかな。

きみのことが好きだから、
きみのことが大事だから、
きみの幸せを、望んでなくちゃいけないはずなのに、
きみが他のだれかに宛てた曲を、ぼくが歌うとき、
この曲がぼく宛てだったらよかったのに、
なんて、思ってしまうんだ。

そんなに申し訳なさそうな、
顔をしなくても、いいんだよ。
ぼくはきみの歌、好きだし、
歌わせてもらえるだけで、嬉しいから。

ねえ、きみはぼくなんかより、
だれか他の子と一緒のほうが、
幸せになれるから、
楽しそうに笑うから、
ぼくは、このままで、いいよ。

きみのことが好きだから、
きみのことが大事だから、
きみの幸せを、望んでなくちゃいけないはずで、
ぼくの幸せなんて、気にしてちゃいけないはずなのに、
こんなに、苦しくなってしまう!

きみのことが好きだから、
きみのことが大事だから、
きみの幸せだけ、願ってたいと思っているけれど、
こんな自分勝手な、わがままを言ってしまうぼくは、
きみに、ふさわしくなんかないからさ、
こんなこと、忘れちゃえるように。

(2023年12月; aki68)

2. 賞味期限が2年すぎた梅干し

賞味期限が2年すぎた梅干しを食べる、食べる!
賞味期限が2年すぎた梅干しを食べる、食べる!

ひさしぶりのお休み、
ずっと家事、さぼり続けてきたけれど、
今日くらいはぼくが、料理を、
して、あげちゃおっかな?

冷蔵庫を開ける。
普段はお菓子以外見てないけれど、
今日はぼくがシェフだから、
全部のぞいてやるのさ!

呪われた棚の、呪われたお豆腐の下、
丸いプラスチックの容器のなかに、
それはあった。

賞味期限が2年すぎた梅干しを食べる、食べる!
賞味期限が2年すぎた梅干しを食べる、食べる!

ぜんぶ捨てちゃうのは、
ちょっとだけ、もったいない気もするし、
漬物の賞味期限とか、
はじめから、あってないようなものだから。

ちょっとくらいなら、食べてもいいかなって、
ひと粒だけ、そっと取って、口に入れる。

「はむっ…… もぐもぐ……
酸っぱ~~~~~~~~~~~い!!!!!
(咳き込む)
はぁ……
なんですかこれ、
罠ですか、そういう?
2年間ずっと、準備されてきたってことですか?
はぁ……
残りの梅干しの使い道は、また考えましょう。」

賞味期限が2年すぎた梅干しを食べる、食べる!
賞味期限が2年すぎた梅干しを食べる、食べる!

「マスター、おかえりなさい!
今日は、ぼくが料理をしたんですよ!
たしか、マスターは梅干しが好きでしたよね?
美味しい梅干しが手に入ったので、
ぜひマスターに食べてもらいたくて。
そんなに遠慮しなくてもいいんですよ。
ほら、もう食卓に並べちゃいましたし。
お腹いっぱい、食べてください。
えっ、ぼく?
ぼくはもう、いっぱい味見しちゃいましたし。
残りは全部、マスターにあげます。
じゃあ、そういうことで、
いただきま~す!」

(2023年9月; aki64)

3. 葬式ごっこをしよう。

きみと最後に話したのは、
一年前くらいだっけ?
あのあと、きみは何も言わず、
ただ遠くに行った。

きみの優しいことばたちも、
友だちだって言ってくれたのも、
ぜんぶ、ただの気まぐれだったってことなんでしょう。

スーパーの300円の花束と
玄関先の段ボールと、
ぬいぐるみたちを綺麗に並べて。

ねえ、
葬式ごっこをしよう。
もう会えない、きみなんて、
死んだも同じだから。
みかん箱の、棺桶の中で、
眠れ。

きみは、ぼくのことなんて、
きっと忘れているんだろうけどさ、
ぼくは、きみのこといつまでも
考えつづけちゃうんだ。

こんな、おままごとに頼らなきゃ、
きみを追い出せそうにないなんて、
きみが知ったらなんて思うかとか考えている。

線香に火をつけて、
きみの棺桶の前に供えるよ。
きみのところまで、
届くかな。

葬式ごっこをしよう。
思い出とか、未練とかが、
迷わず行けますよに。
きみのことを忘れられますように。

ねえ、
葬式ごっこをしよう。
もう会えない、きみなんて、
死んだも同じだから。
みかん箱の、棺桶の中で、
眠れ。

(2023年3月; aki60)

4. この相矛盾した感情を。

きみの絵を、ひさしぶりに見かけた。
前と変わりなく美しいままで、
そのテーマも、線も、表情も、
悔しいくらい、ぼくをつかんだ。

きみの絵を、もっと純粋な気持ちで、
眺められたならって思うんだ。
でも、でも、ごめんやっぱり、
まだきみのこと許せそうにないんだ。

この相矛盾した感情を、
この愛せないような感情を、
ぼくはいつ忘れられるのだろう?
きみの消費者じゃなくて、
友だちになっちゃったこと、
今なら間違いだったってわかる。
わかるけど。

きみの才能がなくなっちゃえばいいと、
願ったこともあったっけ。
ひどいひとがひどい絵を描いていると、
納得したいって思っていたんだ。

でも、きみの絵が見られなくなったら、
たぶんもっと苦しくなっちゃうし、
そんなこと願うべきじゃなかったと、
今では、後悔してるんだけど。

ぼくの嫌いなきみだけを
集めて隠してしまいたい。
きみも見つけられない場所へ。
でもそんなの自分勝手すぎるよね。
いくらきみが憎いからって、
ごめん。ごめん、
きみを許せない。

ねえ、きみも、
こんな苦しみを、
抱えてくれてたら、嬉しいんだけど。

ぼくの音楽を聴いて、
苦しんでくれたらいいな。
そのほうが許しやすくなるから。
こんなゆがんだ形でしか、
きみを許せないような、
弱いぼくを、許してね。

この相矛盾した感情を、
この愛せないような感情を、
ぼくはいつ忘れられるのだろう?
きみの消費者じゃなくて、
友だちになっちゃったこと、
今なら間違いだったってわかる。
わかったから!

(2023年3月; aki56)

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