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しつけ糸

私の実家は、裁縫をする家庭ではありませんでした。とはいえ、裁縫セットはあって、取れたボタンを付けたりしていました。半透明のプラスチックでできた箱に、赤い糸が入っていたのを覚えています。そうはいっても、ミシンのような高等なものは持っていなかったし、そこまで複雑な布仕事をすることもなかったので、しつけ糸とは縁のない生活を送っていたのだと思います。

祖父母の家にミシンがあったのか、と言われると、ちょっとわかりません。子どもの頃から、祖父母の家にはよく出入りしていたので、もしミシンがあったなら、しつけ糸にも触れていたはずだと思います。ただ、そんな記憶は、あまりないような気がします。もっとも、ミシンはそれなりに危険な道具ですから、子どもの前で使うようなことはないだろうなあ、という気もします。祖父母の家には犬もいましたし、ミシンを扱えるような環境ではなかったのかもしれません。置くとしても、子どもの手の届かないところだったでしょうね。

少し話がズレるのですが、祖父母の家には糸車がありました。木製の、小さな糸車です。使っているところを見たことはないし、どうやら演劇の小道具だったらしいので、本当に使えたのかも分かりません。小さい頃は、国語の教科書で読むような道具が手元にあるのが嬉しくて、よく回して遊んでいたのを覚えています。今ではだいぶ壊れてしまっていて、もう回りません。小さい頃の「糸」にまつわる記憶は、その程度だと思います。

そういうわけで、私が「しつけ糸」という概念に初めて触れたのは、小学校・中学校の家庭科でした。みなさんも、小学校でエプロンだのバッグだの、作ったと思います。(ドラゴン柄のエプロンがミームになっていますが、私が何の柄を選んだのかは、もう覚えていません。) その頃に買った裁縫セットを、今でも時々使っています。ボタンが取れてしまったときとか、布を切りたいときとか…… とはいえ、しつけ糸を使うほど、複雑な作業をしたことはありませんが。

そもそも、私はあまり手先が器用ではなくて、針に糸を通すのも、かなり苦労するほうでした。みなさんが買った裁縫セットには、糸通しが付いていましたか? 私の裁縫セットには、小さな針金でできた糸通しが付いていて、私はそれなしで糸を通すことができませんでした。糸通しの持ち手部分に、ギリシアやローマの女神ふうの女性像が刻印してあったのを覚えています。

ここ最近で、私が「しつけ糸」の存在を思い出したのは、ミクコスを買ったときでした。ミクコスのスカートに、折り目をきちんと付けるためのしつけ糸が通されていたのです。私は最初 (購入直後、アパートで試着したとき)、それに気づかず、ずいぶんタイトなスカートだなあと思って履こうとしていました。履いたはいいものの、まともに歩けず、困ったなあと思っていると、糸が切れて、どうやらこれはしつけ糸だったらしい、ということが分かりました。もっとも、糸が切れた直後は、おろしたてのコスプレ衣装を壊してしまったと思って、青くなっていたのですが。

いま、「しつけ糸」という言葉を聞くと、国際単位系のことを思い出します。ご存知の方はご存知だと思いますが、国際単位系はコスプレお針子さんとして名高く、マンハッタンカフェさんのエプロン私服を制作。そして最近では、コミックアカデミーの公式キャラクター「小美亜佳子」さんの衣装まで作ってくれました。国際単位系は作業が丁寧で、とてもかわいく衣装を仕上げてくれるので、本当にありがたいです。私の近辺で「しつけ糸」を使っているのは国際単位系くらいなので、私は「しつけ糸」という言葉を聞くたび、国際単位系のことを思い出すというわけです。

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