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即売会でCDを売ろう! 前編

はじめに


こんにちは、秋山翠花です。

今回のブログ記事『即売会でCDを売ろう!』では、同人即売会で自作 CD を頒布することについて、ノウハウやお気持ち (?) などをまとめます。「即売会で音楽を発表したいなあ」と思っている方、あるいはより一般的に、「即売会に参加したいぜ!」と思っている方、さらには「即売会って何……?」という方、ぜひお読みください。

今日公開する記事は、『即売会でCDを売ろう!』の前編です。主に、即売会に参加するメリット・デメリットについてまとめています。12月8日公開予定の後編では、同人おたくの事例研究として、私がどのように即売会に参加しているのか (即売会に申し込み、CD を焼き、会場に行き……)、具体的なことを書きたいと思っています。

追記: 後編を公開しました! ぜひご覧ください。

※この記事は、コミックアカデミー実行委員会が企画している『UT Doujin Advent Calendar 2023』の記事として執筆されています。

もくじ


自己紹介――誰?


先述のように、この記事は Advent Calendar に出稿したものなので、私のことを知らない方もご覧になると思います。そこで、私のことを簡単に紹介しておきましょう。もう私を知っているという稀有な方は、次のセクションまで読み飛ばしてください。

著者近影 著者近影

私の名前は秋山翠花です。作詞家・作曲家・ボカロP・初音ミクを自称しています。
最近は、同人音楽サークル「逆たまごかけごはん」として、コミアカコミケボーマスなどの即売会に参加し、CD を頒布しています。ときどきコスプレもします。
本業は学生です。東京大学で学部生をしています。

もっと詳しい情報は、このサイトの「私について」ページ・「Links」ページをご覧ください。

では、自己紹介はこのくらいにして、本題に入りましょうか。

基本的な考え方――即売会に対する姿勢


ノウハウなどの「実用的な」情報をお話しする前に、まずは「即売会に参加すること」それ自体について書きたいと思います。

そもそも、この記事をご覧になっているみなさんは、多かれ少なかれ即売会にご関心があるのだと思います。あるいは、「即売会に参加してみたいけど、私が参加してもいいのかな……?」という方もいらっしゃるでしょう。 私はと言えば、「全員即売会に出てCDを売りなさい!」と思っています。なぜなら、楽しいので。

そういうわけで、私の説明にはとんでもなくバイアスがかかっています。この記事の内容を信じて損害を被った場合は……まあ、諦めてください♡

さて、みなさんが即売会に対して抱いている感情は様々あると思いますし、その理由も十人十色だと思います。ここではとりあえず、私が即売会に対して抱いているイメージ、特に長所・短所 (メリット・デメリット?) を挙げてみます。

メリット――即売会に参加すべき理由

色々な人に触れてもらえる

これは結構大きいです。みなさんも胸に手を当てて考えてほしいのですが、普段オタク・コンテンツを摂取するとき (オタク・コンテンツ以外でもいいです)、「既に知っているもの」が優先的に消費される傾向があるのではないでしょうか。例えばニコニコ動画や Youtube で音楽を探すとき、よほど酔狂な音楽おたくでない限り、既に有名なもの・アルゴリズムにおすすめされたものだけを聴いていくと思います。

これに対して、即売会においては、私たちは「サークル参加者」という資格のもとで、基本的には平等です。もちろん、サークルの配置には SNS のフォロワー数などが反映されます1し、有名なアーティストのブースだけを訪問して帰る一般参加者もいるでしょう。しかし、会場をなんとなく回遊している参加者さんも、案外多いものです。こうした人々にアプローチすれば 2、自分の作品を広く知ってもらうチャンスになると思います。

ときどき、「有名になったら、即売会に参加したいなあ……」と仰る方がいます。言いたいことは分かりますし、確かに合理的な考え方だなあとは思うのですが、私はむしろ、同人活動を始めたばかりの人にこそ、即売会に参加してほしいと思っています3。同人誌即売会に参加して、自分の作品に触れてくれる人を増やしてみませんか?

さて、この記事はコミアカ実行委員会が主催する『UT Doujin Advent Calendar 2023』の記事として執筆されているので、コミアカの宣伝もしておこうと思います4。皆さんご存知のコミアカ (正式名称: コミックアカデミー) は、東京大学の学祭 (五月祭・駒場祭) で開かれている、オールジャンル同人誌即売会です。逆たまごかけごはんも、コミアカ22 (2023年五月祭) から参加しています。

コミアカは、サークル参加者を東大関係者に限定している5こともあり、他の即売会と比べて規模が小さいです。そのため、様々なジャンルのサークルが、比較的狭い範囲に集中して配置されています。したがって、大規模な即売会と比べて、他ジャンルとの交流が容易になっています。より広い範囲の・普段交流しないような人々に、自分の作品を知ってもらえるという意味では、コミアカは理想的な即売会といえるかもしれません 6

直接話せる

ここまでは、「新しいファン層にアプローチする」ことを主眼において話してきましたが、ここからは「既存のファン層との交流」について書いていきます。

正直な話、作品を売るだけなら、ネット通販でもできます。また、新しいファンの獲得も、Twitter などのインターネット・サービスを使えば、ある程度できるかもしれません。即売会の特色を挙げるとすれば、やはり「作品を買ってくれた人と話せる・感想を聞ける」ことがあると思います。私はインターネットのテキスト・コミュニケーションを信用していないので 他人への自発的・直接的なコミュニケーションを躊躇してしまいがちな人間だし、みなさんもそうだと思っているので、なんとなく現地の即売会のほうが良いなぁと思っています。強制的に (?) お話しすることになりますから。

モチベーションになる

上の2項目と関連するのですが、即売会参加はモチベーションになります。自分の作品に触れてくれる人が増える・聴いてくれる人が確かに存在していることを確かめることで、より良い作品をつくりたい! という気持ちになってくるような気がします。それに、即売会参加って純粋に楽しいので、「また即売会に参加したい!」というモチベーションで作品を仕上げることもできるんじゃないかなあと思います7

即売会会場に、自分の拠点を持てる

突然ですが、みなさんは即売会に一般参加したことがありますか? 私は (そこまで多くはないですが) あります。一般参加の即売会でいちばん困るのは、「自分の荷物を置く場所がない」ことです。もちろん、コスプレクロークなどで自分の荷物を預かってもらうこともできますが……

一方で、サークル参加さえしていれば、即売会の会場に自分のブースができるわけですよね。ここに荷物を置いておけば、いつでも・簡単に物資の出し入れができて便利です。また、休憩所として使うこともできる (なんと、サークル参加すると椅子が貰えます!) ので、かなり嬉しいです。

デメリット――即売会に参加すべきでない理由

大変

ここまで、即売会の良いところばかり書いてきました。みなさんも、「そんな美味しい話はないんじゃないの?」と思いかけてきた頃だと思います。実際、即売会参加にはデメリットもあります。その最たるものが「即売会参加は大変」ということです。

当たり前のことなのですが、即売会に参加するためには、作品を用意しなければなりません。世間の同人作家さんは、ほとんどがこのフェーズで苦しんでいます。作品って、書こうと思って書けるものではないので…… また、作品が完成したとしても、それを印刷・(CD なら) 焼き込み・封入する作業が生じます。さらに、即売会当日には、早起きをして会場に行かなければなりません8。これはとっても大変です。

お金がかかる

また、即売会にはお金がかかります。即売会での出費を列挙してみましょう。

1. サークル参加費

まず、即売会への参加自体にお金がかかります。一般的な即売会では、1スペース5000-10000円くらいが相場でしょうか9。ちょっと割高だな……と思いましたか? 私は思います。

ただ、こうしたサークル参加費には、「サークル入場チケット」が含まれていることに注意する必要があります。

例えば、コミケでは、サークル参加者に「サークル入場チケット」が2枚支給されます。これは、一般の入場者よりも早く会場に入れるチケットです。もちろん、趣旨としては「一般参加者より早く入って準備してね~」ということなのですが、一般入場者の長蛇の列を回避し、運が良ければ開場直後 (かつ、一般参加者の波が押し寄せる前) に他サークルの買い回りができるという点で、たいへん優れているといえるでしょう。

サークル参加費の経済性は、例えばコミケの「アーリー入場チケット」との比較からも分かります。コミケの「アーリー入場チケット」を購入すると、一般参加者より30分早い、10:30から入場できるようになります。この価格は1枚5000円です。一方で、コミケのサークル参加費は8000円で、2枚の「サークル入場チケット」が支給されます。この入場時間は8:00-9:30です。そう考えると、サークル参加費が、存外お得だということが分かります。アーリー入場チケットより (1枚あたり) 安い価格で、アーリー入場チケットより早く入場でき、しかも自分の作品を頒布することもできる。最強ですね。

そう考えると、サークル参加費はほぼタダです。書いてから気づいたのですが、全然デメリットではありませんでした。

とはいえ、やっぱり5000-10000円って高いですよね。パッと出せるお金ではない。
そこで、みなさんにお勧めしたいのが「コミアカ」です10! コミアカの参加費は1500円程度 (1スペース・2日間) と破格の安さで、「サークル参加で5000円払うのはちょっとな……」という方でも、手軽に参加できます。とりあえず、試しにコミアカに出てみて、同人誌即売会の雰囲気を感じてみるのも良いかもしれません。

2. 作品制作費

当然のことながら、作品制作にもお金がかかります。特に、印刷所・プレス工場に頼むと、とんでもない費用がかかります。

一方で、いわゆる「コピー本」「手焼きCD」であれば、ある程度安く仕上げることができます。ただ、その分クオリティは下がりますし、作業量も莫大なものになりますが……

ちなみに、逆たまごかけごはんの CD はだいたい手で焼いています。CD-R 1枚30円、スリムケース 1枚30円で合計1枚60円、さらに電気代・プリンターのインク・紙代がかかって、あわせて100円くらいでしょうか……?

いっぽう、C102で頒布したCD『逆たまごかけごはん アレンジコンピレーション』は、CDをプレス工場に、ジャケットを印刷所に依頼し、ケースも普段より豪華なジュエルケースを使用しました。かかった費用としては、プレス費用が40000円 (1000枚)、ジャケット印刷費が12000円 (200セット)、ジュエルケースが8000円 (200枚) 程度で、やはり1枚100円くらいでした 11

でも、こうした制作物って腐らないので、例えば文化祭の模擬店みたいな、厳格な需給管理をする必要はありませんよね。いちど焼いてしまえば (印刷してしまえば) 半永久的に売ることができるので、作品制作費についてはそこまで気にしなくてもいいかもしれません 12

3. コスプレ関連

え~、即売会にサークル参加するみなさんは、当然コスプレすると思うのですが (冗談ですよ!)、コスプレにも結構お金がかかります。初音ミクのような、非常にメジャーなキャラクターであれば、既製品を比較的安価に手に入れることができるのですが、それでも衣装10000円+ウィッグ4000円程度かかります。既製品の衣装がないキャラクターの場合は、自作するかオーダーメイドするかしなければならないのですが、これはもっと高価、かつ、もっと大変です。

さらに、普段メイクする習慣のない方は、メイク道具を揃えなければいけません。これも大体10000-15000円くらいかかります (プチプラを選んでさえ!)。

コスプレはとても楽しいですが、このようにお金がかかるので、無理のない範囲で挑戦してみてください。

小括

ここまで、即売会参加のメリットとデメリットを列挙してみました。私はといえば、こうしたメリットとデメリットを天秤にかけた上で「即売会に参加すべき」だと思っているのですが、みなさんはどうでしょうか。

まあ、細かいことを書いてきてしまいましたが、もし迷っているのなら「とりあえず」参加してみるのも良いと思います。コミアカのように、参加のハードルが低い即売会もありますし。

次回予告


ここまで、アドカレ記事『即売会でCDを売ろう!』の前編をお送りしました。今回は抽象的 (?) な話しかしていないので、とっても退屈だったと思います。すみません……

12月8日に公開する予定の後編では、「実用的な話――いかにして即売会に申し込み、CD を焼き、売るか」と題して、私のサークル「逆たまごかけごはん」の制作風景を、少しだけお見せしたいと思っています。どうぞお付き合いください。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。今後のアドカレ記事も、ぜひお楽しみください!

追記: 後編を公開しました! ぜひご覧ください。

即売会でCDを売ろう! 後編

注釈


  1. 人気のアーティストは「お誕生日席」(大きい通路脇のスペース) や、「壁」(展示場の壁沿いに用意されたスペース。広い) を割り当てられることが多いです。私は C102 (2023年の夏コミ) でお誕生日席を割り当てられてしまい、泣きながら CD を売っていました。こう書くと、「逆たまごかけごはんでさえお誕生日席になるんだから、実は大したことないんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、この時のお隣は超大手の「ツインドリル」さん (重音テト公式サークル!) でした。お誕生日席って、そのくらいの規模感です。 

  2. こうした人に足を止めてもらう方法については、後のセクションでお話しします。 

  3. どういう立場でものを言ってるんだろう……? 

  4. 利益関係の明示をしておきましょう! 

  5. サークル参加は、東大の教職員・卒業生・学生が1人以上いるサークルに限られています。もちろん、一般参加に制限はありません。 

  6. 「東京大学の学祭に参加している人」というフィルターはかかりますが! 

  7. なんか不健全な気もしますが…… 

  8. 例えば、コミケ (C103) のサークル入場時間は 8:00-9:30 です。コミケの会場であるビッグサイトは、臨海部の意味不明な場所にあるので、人間が住んでいる場所から非常に遠いことが知られています。したがって、サークル参加者はとんでもない早起きを強いられることになるのです。というか、即売会の会場が全部都心から遠すぎるのが悪くないですか? ビッグサイトも、東京流通センターも、PiO も…… (PiO はまだマシかもしれない) そういう意味では、コミアカはキャンパス内で開催されるので、かなりラクです。 

  9. 同人音楽サークルに縁がありそうな即売会でいうと、ボーマスは6000円 (ボーマス54)、M3は7000円 (M3-2023秋)、コミケは8000円 (C103; C102では10200円でしたが、C103から大幅に値下げされました)、といったところです。 

  10. この記事は、コミックアカデミー実行委員会が企画している『UT Doujin Advent Calendar 2023』の記事として執筆されています。どしどし宣伝しちゃうぞ! 

  11. 色々な方に Remix の提供をいただき、素晴らしい CD に仕上がったので、ぜひお求めください。別に、大量の在庫を抱えているわけではないです。 

  12. よほど特殊な装丁・特殊な印刷をしない限りは、ですよ! ああいう装丁・印刷はとんでもなく高価なんじゃないでしょうか。例えば、コミアカにも参加している同人サークル「青葉小路」さんは、いつも特殊装丁の美しい本を出していますが、あれってどのくらいお金がかかるんでしょうね…… 今回のアドカレで執筆してくれないかなあ。 

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